『指紋を見直す機会に』
以前、ハードカバー版を読んだ事があり、この本の事は知っていた。
文庫版が新しく出たのを知ったのは偶然だが、タイトルを見た時点で読みたい気持ちがムクムクと湧き上がった。それだけ、印象深い本であったからだ。
現在、外国人の登録には指紋捺印が不要になっている。個人認証で指紋を使うことはあるものの、抵抗を持つ人が少なくない。指紋による個人認証は「犯罪」のイメージが強いからだろう。本の中には様々な犯罪者が登場する。そこに世界一とも言える技術をもって痕跡を探す。しかし、それだけだろうか?
最初に読んだ時は、オウム事件等の捜査に目がいった。しかし今回は、その合間に語られる小話にも目がとまる。古墳から発掘された土器の指紋採取から古代に思いを馳せる主人公。
確かに指紋認証は犯罪捜査で築き上げた技術だ。しかし今、それを捜査にしか使わないのは勿体無い気がしてくる。「万人不同」「終生不変」の指紋だからこそ知りえた過去、証明できる事。誰もが持つ指紋というものに、改めて存在の重みを考えさせられる一冊である。
読み終えた後、その指紋を消す施術を行ったオウム信者を思って哀しくなる。実話だからこそ、余計に。
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