『血液ドロドロ?』
近頃はやりの「健康番組」の話題は、何といっても血液だろう。テレビでは毎日のように、何か体に良い食物が紹介されていて、その時必ず証拠のように映し出されるのが、その食品を食べ続けた被験者の血液だ。「ほうら、あんなにドロドロだった血が、こんなにサラサラ。」どの番組司会者も異口同音にこう唱える。本当に、毎日毎日よくこんなに体に良い食材を見つけてくるものだ。気がついたら視聴者の食卓は、中国の皇帝の不老長寿の宮廷料理さながらの「体によい食物」が所狭しと並べ立てられたものになるに違いない…。
でも、本当なのだろうか?血液がサラサラになれば全て問題解決なんだろうか?そもそも血液というのは、どろどろしているものではなかったっけ?人間ドッグの血液検査って、コレステロール値を調べるだけのものじゃないよね。そういえば、少女漫画でおなじみの血液型による出生の秘密がわかるというもの、最近はDNA検査に押されてあまり聞かないけれど、どういう仕組みだったけ?そんな血液に関する素朴な疑問に答えてくれるのがこの本だ。筆者が現役の血液内科医として、日々の診療の中で出会った症例を紹介しつつ、広範囲な血液の知識を語ってくれる。血液検査で分かる数多くの病気や、血液の働き、遺伝子検査や血液を材料とした治療薬についてなど話題はつきない。
この世にある色々な病気を知ることは少し怖いけれど、献血をした血がどんな風に活用されたかを知ったり、様々な病気が早期発見で治っていくような医療の進歩を知ることはとても心強い。ABO血液型の遺伝表や巻末の健康診断/検査値の見方の表など、ちょっと役に立つ資料もあって、好奇心を満たしてくれる一冊だろう。
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